認知症の物忘れと通常の物忘れの違い
あれ、あの人誰だっけ?
えーと、あれとって!あれ、ほら、ハサミ!
最近物忘れがひどくなったなぁ?もしかして…認知症?
いえいえ。それは単なる老化現象です。
物忘れの種類
認知症の代表的症状である物忘れは、通常の物忘れとどこが違うのでしょうか。私たちはふだんうっかり物忘れをしてしまうことがあります。
・外出後に「あれ、鍵閉めたっけ…」
・ある場所に到達したときに「あれ、なにしに来たんだっけ…」
・物をなくした時に「あれ、どこに置いたっけ…」
・たまに来る道で「あれ、どっちに行けばいいんだっけ…」
・あったことのある人をみて「あれ、この人の名前なんだっけ…」
誰にでもあるような物忘れですが、こんな時は考えることで思い出される場合が多いです。(鍵の閉め忘れ等、毎日の動作の中の忘れものは思い出しにくいですが。)
このような物忘れは老化による誰にでも起こる現象なので気にすることはありません。別段病的に進行するわけでもありません。
認知症の物忘れは全く違います。
・食事をしたあとに「ご飯まだ?」
→ご飯を食べたこと自体を忘れている。
・映画を見た後で、
「あのシーン良かったよね~」「え?どのシーン?あ、あれか」であれば正常ですが、「あのシーン良かったよね~」「え?何の話?映画なんて見てないよ」と、映画を見たという事実をそっくり忘れてしまうのは認知症の物忘れです。
・物をなくした時に「盗まれたのではないか?」と感じる。
物をなくした自覚が全くないので、なくなったということは誰かが持っていったのだと感じてしまいます。認知症は忘れているという自覚がないため、しばしば被害妄想に走ってしまいます。
・あったことのある人を見ても、知らない人と同じように接する。
その人の記憶が全て失われているので、会ったことがあるとも思わないのです。通常の物忘れだと名前、顔など一部分が思い出せないものですが、全体の記憶が抜け落ちているのが認知症の症状です。
これは、海馬の委縮により、新しい記憶が全く脳に残らないために起こる現象です。症状が進むと古い記憶も無くなっていきます。
つまり、忘れたことを覚えている(自覚している)のが通常の物忘れで、忘れたことさえ忘れている(忘れたという自覚がない)のが認知症の物忘れなのです。
普段の生活の中で、最近物忘れがちょっと多いなぁ、もしかして認知症?と怖くなることもあるかもしれませんが、自分で「また物忘れしちゃった」と自覚している時点で認知症の物忘れとは違います。他人から指摘され、「全く身に覚えもないのに…」と感じることが増えたなら認知症を疑い受診してみるとよいかもしれません。
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