認知症予防と若脳

中年期の睡眠時間が少ないと、認知症リスクが30%増加する byイギリスの研究(2021)

イギリスの成人約8000人を25年間にわたって追跡調査した結果、50~60代の睡眠時間が認知症発症リスクを大幅に上げてしまうことがわかりました。

睡眠時間が6時間以下は危険信号

科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された内容によると、50代、60代の睡眠時間が6時間以下の人は、7時間の人と比べて認知症になるリスクが増加します。
これは、成人8000人を25年間追跡調査し、分析したものです。

研究結果には、さらにこんな記載があります。

50代、60代、70代の間に継続して睡眠不足(1日6時間以下の睡眠)が続いた人は社会人口統計学的な要因、行動による要因、心血管やうつなどによる要因と関係なく、認知症が発症するリスクが30%増加する


30%という数字はなかなかインパクトがあるのではないかと思います。

では、睡眠不足が認知症にどのような影響を及ぼすかをまとめてみたいと思います。

睡眠は有害なたんぱく質の蓄積を防ぐ効果がある

人は睡眠によって、脳に溜まったゴミ(有害物質)を洗い流しています。毎日睡眠中に脳内では、一斉掃除が行われており、認知症の主要な原因とされるアミロイドβタンパク質を除去しています。

睡眠が十分でないと、回収が追いつかなくなり、アミロイドβタンパク質は脳内に蓄積されます。それが沈殿してアルツハイマー型認知症の方の脳に見られる脳のシミとなります。

睡眠不足は糖尿病の原因にもなる

睡眠不足は糖尿病とも関係があります。
睡眠時間が足りないと、体内の血糖値をコントロールするインスリンの働きが弱くなります。
その結果、血糖値が上がりすぎてしまい、糖尿病を引き起こすことになります。

糖尿病は認知症の危険因子の1つですから、睡眠不足は血糖値という角度から見ても認知症のリスクを高めてしまいます。

睡眠不足は高血圧の原因になる

睡眠不足はさらに、高血圧のリスクも高める。
アメリカの研究によると、中高年で睡眠が5時間の人は、6時間の人に比べて高血圧になる人の割合が37%も高かったといいます。

睡眠時間が足りないと、自律神経に不調をきたします。血圧をコントロールするホルモンが乱れ、血圧が上昇してしまいます。
特に、昼夜が頻繁に逆転する人(夜勤がある、徹夜しがちなど)は、睡眠時間に関わらず注意が必要です。

高血圧も、認知症の危険因子の1つです。

睡眠不足は認知症のリスクを何重にも増やしてしまう

睡眠不足は軽く考えがちです。毎日が忙しかったり充実していると、睡眠時間を削って頑張ってしまうでしょう。しかし、睡眠は人にとって欠かすことのできない大切なもので、体内の処理にはそれなりの時間を要するのです。

認知症リスクとして考えると、「睡眠不足である」というだけで、大きな危険因子をいくつもかき集めてしまう結果になりかねません。

また、7時間の睡眠時間を取っていると考えていても、睡眠の質が悪い場合は注意が必要です。睡眠時無呼吸症候群の方や、夜間に何度もトイレに行くという方は脳の掃除の効率が落ちていますから、睡眠の質を高めていくことが大切になります。