脳のいろは

年を取ると思い出せなくなるのはなぜ? 海馬と加齢の関係とは

年を取ると、だんだん「あれだよ、あれ」、「えーっと、なんだっけ?」と物事を簡単には思い出せなくなります。加齢とともに思い出す(想起)力が衰えるのはなぜでしょうか。その理由と改善方法をまとめます。

海馬は脳の記憶の中枢

私たち脳の中で、記憶の中枢といわれる場所が海馬(かいば)です。海馬には約1億個の神経細胞(ニューロン)があります。

人の記憶の中枢は脳の中にある海馬が担っています。海馬には約1億個の神経細胞があり、海馬は脳の中で神経細胞が新生することがわかっている部位です。つまり、新しい細胞が常に生まれている場所なのです。

海馬は、使えば使うほど新しい細胞が生まれたり、細胞の死滅を防ぐことができ、良い状態を保ち続けることが出来ます。一方で、使わないでいると、だんだん衰えていきます。すると、「あれよ、あれ」と代名詞が増えたり、テレビで有名人を見ても「この人誰だっけ?」と名前が出てこなかったりと、記憶の衰えを実感するようになっていきます。

海馬の衰えによる記憶力の低下を実感すると、人は「年だなぁ」と感じるものです。しかし、使うことでその機能を保つことが出来る部位ですから、諦めるにはまだ早いのです。

海馬が記憶を整頓する

海馬は、あたらしい記憶が入ってきたとき、まず一定期間それを保持します。そして、保持した記憶を「必要な記憶」と「不要な記憶」に分類し、必要な記憶を脳の別の場所(側頭葉など)にある記憶の貯蔵庫にしまい、不要な記憶を消去します。こうすることで、海馬は次の記憶が入ってくるスペースを空け、いつでも記憶を受け入れられるようにしているのです。

記憶の整頓を行なうのは睡眠時

海馬が記憶の整頓を行なうのは、寝ている時です。人が夢を見るのは脳が活動しているからであり、記憶の整頓が夢に関わっています。
睡眠時間が足りないと、海馬内の記憶の整頓がはかどらず、記憶が散らかったままになってしまいます。なんだか物事が覚えられないし、すぐ忘れてしまうな…と感じるなら、それは睡眠不足のせいかもしれません。

年齢を重ねても記憶力は低下しない?

実は年を重ねても記憶力は低下していません。これは、30ほどの単語を記憶し、その後で思い出す実験でも確かめられています。この実験で、単語を記憶した後、思い出してもらうと、若者のほうが思い出せる数は多くなります。

あれ、記憶力はやはり低下している?

いえ、そうではありません。高齢の方の多くは、「記憶できているけれど、思い出せない」状態にあります。その証拠に、「この単語は覚えましたか?」という質問に切り替えると、若者と同じかそれ以上に正解します。

「何を覚えたか」では思い出せませんが「これは覚え中に入っている?」と聞けば思い出すのです。つまり、覚えてはいるわけです。

年齢とともに思い出せなくなる理由

人は年齢を重ねると思い出す力(想起力)が衰えます。これは、記憶の司令塔である海馬や、脳全体の司令塔である前頭葉の動きが鈍くなることが原因の一つですが、もう一つ理由があります。

それが、脳内の記憶が増えることです。たとえば、30冊しかない本の中からお目当ての本を探すのは簡単ですが、500冊の中から探そうと思ったら苦労しますよね。これと同じことが脳内でも起きていると考えられています。

思い出す力(想起力)を鍛えるには

脳は使えば使うほど成長します。
ですから、思い出す力(想起力)を高めるためには、たくさん脳を使えばいいのです。

と言われても、どうすればいいのかわからないかもしれません。

脳は楽しい事や新しい事にふれると大きく活性化します。また、簡単な計算問題や朗読も脳は活発に働きます。
年齢を重ねると新しい事は減っていきますが、慣れない人との会話をしてみるとか、SNSに挑戦する等、あたらしい事を見つけることはまだまだできるはずです。
その他、手先を使うとか、カラオケも脳にはとてもいい行動です。

総合すると、『積極的に何かをすること』が脳の老化を止め、成長させると考えておけば間違いはないでしょう。