認知症と介護

軽度認知障害(MCI)とは

健常者と認知症患者の中間にあるのが「軽度認知障害」です。認知症に移行するかどうかの分岐点といっていいでしょう。

軽度認知障害(MCI)とは?

軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)とは、認知症になる一歩手前の状態です。認知症を発症してはいませんが、健常者と比べると主に記憶機能が著しく衰えている状態のことです。
日常生活はほぼ通常通りに送ることができ、生活は自立しています。

軽度認知障害から、認知症発症に移行する

認知症の前段階という位置づけの軽度認知障害。ここから、だいたい3~4年くらいで認知症を発症するケースが多いといいます。

とはいえ、軽度認知障害の全員が認知症を発症するわけではありません。あくまで軽度認知障害は認知症の予備軍です。ここで脳活など、脳をしっかり使ったり、運動をしたりして、軽度認知障害から抜け出す人たちも存在します。軽度認知障害は認知症と健常者の分岐点であるといえます。

軽度認知障害のうちにこの症状に気づくことが出来れば、認知症発症を遅らせたり、止めたりする治療やトレーニングを始めることが出来ますから、おかしいなと思ったら専門の外来を受診することが大切です。

軽度認知障害の症状とは?

認知症の前段階であり予備軍である軽度認知障害は認知症に似た症状が現れます。
以下のような症状がよくある症状です。
当てはまる項目が複数あるなら、神経内科や物忘れ外来の早め受診を考えてみてください。

記憶力の衰えを強く感じる

テレビを見ていて、「この人の名前なんだっけ?」とか、「昨日のご飯なんだっけ?」といったレベルのもの忘れは、通常のもの忘れですから、気にする必要は全くありません。
年齢と共にこの類のもの忘れは増えますが、それは通常の老化によるものです。

危険なもの忘れは、「夕飯に何を食べたっけ?」ではなく、「夕飯食べたっけ?」、「この前見た映画のタイトル何だけ?」ではなく「映画なんて見たっけ?」というタイプのもの。

経験したことそのものをすっかり忘れてしまうのは危険な物忘れです。

自分に対する自信を失う

軽度認知障害になると、記憶力が低下し、また並行作業(複数のことを同時にこなす)事が苦手になるので、自信を失っていきます。そのため、人に頼ることが目立つようになります。
自分から行動が起こしにくくなり、何かを言われるのを待つようになったり、決断を避けるようになったり、ぼーっとすることも多くなったりが目立つなら、危険なメッセージかもしれません。

思い込みが激しい

一度思い込むとなかなかそれを正すことが出来なくなります。
記憶障害が出ることに対する不安が増し、だまされまいとすることで、思い込みに縛られたり、被害妄想が膨らむことも多くなります。
新しいことが覚えられなくなったことにより、昔の記憶に頼ろうとする思考も思い込みを強くしていると考えられます。

以前は難なくできた簡単な計算でミスをする

頭の中で計算をするという作業が難しくなります。
計算の際に、1つ目の数字を覚えておくとか、1つ目と2つ目の数を足した答えをいったん覚えておいて、さらに3つ目の数を足すなど、「覚えておく」作業は極端に難しくなっていきます。
計算には一時的な記憶がつきものですから、簡単な計算も難しいのです。

ただ、経理職など、数字を扱う職業に就いていた場合、計算は日常業務であったためにその能力は残りやすいです。得意な能力はキープされやすいのです。

やや難しいことが理解できず反応が薄い 

脳の中で一度に処理できる量が減少するため、少し難しいくらいのことが理解できなくなります。会話の際、「理解できていないかも?」、「反応がない(聞こえたのに無視?)」ということが多いなら、 軽度認知障害による 認知機能の低下が原因かもしれません。

計画が立てられない・遂行できない

計画を立てたり、その計画通りことを進めるのは、脳にとって結構難しい作業です。時系列にすることを積み上げていかなければいけませんし、完成系から逆算したり、現在が計画のどのあたりに位置しているかを把握したりと、難しい思考をしています。
思考力や判断力、決断力が低下してくるため、計画を立てたり、遂行する能力は発揮しにくくなっていきいます。

複数のことを同時にこなすことが難しい

話しかけられた瞬間に「あー、間違えちゃった」という経験は誰しもあるでしょう。
人は2つ以上のことを同時に行うことに適した脳を持ち合わせていません。

例えば、お湯を沸かしながら野菜を切り、沸いたお湯に野菜を投入して、ゆでている間にソースを作り…と、料理は様々な工程を同時に次々とこなさなければいけません。最近、食事のメニューのレパートリーが減ってきたなと感じたら、この症状を疑ってみてもよいかもしれません。

この他、会話をしながら新聞を読み合間にコーヒーを飲んだり、外の洗濯物を気にしながらテレビを見つつ編み物をしたり、と、普段当たり前のようにしていることがしにくくなっていきます。