認知症と介護

認知症の人が同じ話を何度もする理由とは

同じことを何度も聞いてくる、同じ話を何度もするという認知症の特徴は、どんな理由から生まれるのでしょうか。

同じ質問を何度もするのはなぜ?

「今日は何時に出るんだっけ?」、「ご飯はいつ?」、「どうやればいいの?」
認知症の方は、同じことを何度も聞いてくることがよくあります。

本人としては、同じ質問をしたことを忘れ、大事なことを忘れたくない、失敗をしたくない、安心したいという気持ちで聞いていることが多いといいます。
これに対して「さっき言ったでしょ」と答えてしまうのは、上記の気持ちを考えるといい言葉とはいえません。

もし、自分が認知症かもしれないと自覚している人であれば、「やはり認知症なのだ」と気分が重くなりますし、認知症の自覚がない人であれば、「どうして怒られたの?」と混乱してしまうでしょう。

何度聞かれても、その都度本人を安心させるつもりで、変わらず答えるのがいいといいます。

また、認知症の方に、『保続』という症状が現れている場合もあります。これは、思考の切り替えが出来なくなる症状で、結果として同じ言葉を繰り返すことになります。
たとえば、こんな会話になったりします。

「お名前は?」
「高岸です」
「年齢はおいくつですか?」
「高岸です」
「どちらから来ましたか?」
「高岸です」

最初に名前を聞かれたときから思考の切り替えが上手くいかなくなり、同じ言葉を繰り返してしまいます。この症状から同じ質問を繰り返している可能性もあります。

同じ内容の話を何度もするのはなぜ?

「この話もう何回も…いや10回以上聞いた…」
同じ話題を繰り返しするのも認知症患者の特徴です。
本人は初めて話すつもりで話しているので、相手が知っているとは思っていません。

自分が話をしている間は、聞き手と時間を共有でき、そこに聞いてくれる人が居てくれているという安心感が得られます。この状況が欲しいがために、自分の限られた記憶の中から、話題を見つけて話していると考えられます。このため、同じ話題が増えるのでしょう。

本人が時間を共有したいのであれば、ただ「うんうん」と聞いて付き合うことが本人を安心させる方法といえます。本人は不安が大きい為、聞き手がそっけない態度をとると、気分が落ち込んでしまう危険があります。認知症患者は、「○○さんに話を聞いてもらった」というエピソード自体は忘れても、○○さんから悪い感情を受け取ったという感覚が残ることもありますから、そっけない態度はあとあとまで尾を引くかもしれません。

認知症患者本人の気持ちを考えることが大切

何度も同じことを聞かれたり、何度も同じ話をされれば、イライラしてしまうのが人間です。
しかも、同じ話の内容が間違っている場合も多く、ついつい訂正したくなってしまいます。

しかし、訂正しても、本人は間違った内容のほうで記憶しているのですから、意味はありません。それどころか、否定されたことから生まれる、介護をする人に対するネガティブな気持ちが残ってしまうかもしれません。
認知症の方本人の気持ちに寄り添って対応することが大切です。