認知症と介護

認知症の治療をサポートする5つのリハビリ

認知症は、脳細胞を壊し、脳内の神経ネットワークを破壊していく疾患です。しかし、脳には可塑性(変化できる性質)がありますから、リハビリが重要です。ここでは、認知症のリハビリについてまとめました。

リハビリは認知症の進行を遅らせるカギ

認知症は世界で患者数が増えています。そのため、世界中で研究が進み、新しい治療薬も開発されるなど、少しずつ向き合いやすくなってきている疾患です。しかし、今だ完全に治療する方法は見つかっておらず、少しでも進行を遅らせ、症状が進まないうちに天寿を全うすることが本人にとっても、家族にとっても望む方向でしょう。そのためにカギとなるのが、リハビリです。

脳の可塑性を最大限利用する

脳には可塑性があります。可塑性とは、粘土のような性質に例えることができます。粘土は、押せば形が変わりますが、そのままの形をキープする力も持っています。たとえば、粘土で作った猫の耳が取れて無くなってしまっても、周囲をこね直せばそこからまた耳を作ることが出来ますよね。

このように、脳の神経細胞や神経細胞同士の繋がりが壊れて使えなくなっても、リハビリをすることで、別の神経細胞と繋がったり、新しい神経細胞を生み出すことで機能を維持することが期待できるのです。

認知症とリハビリ

認知症の進行を遅らせるには、脳を刺激して、脳の神経細胞にネットワークを強化してもらうことが重要です。リハビリには次のような様々な方法があります。

認知症のリハビリ1 五感を刺激

視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚という五感を刺激すると、それぞれを司る脳領域にアプローチできます。たとえば次のようなことは全て五感を刺激する訓練になります。

・花の香りをかぐ
・ピアノを弾く/音色を聞く
・指の感覚だけで小銭を当てる
・沢山会話する
・味わって食べる
・肌触りのよい服を着る

認知症のリハビリ2 脳トレーニングを楽しむ

脳トレーニングパズルや読み書き計算は脳の血流量を増やし、脳を活性化させることがわかっています。当サイトにはたくさんの計算プリントや脳トレーニングパズルを掲載しています。姉妹サイトの『シニアレク会館』にはさらに多くの脳トレパズルプリントがあります。同じく姉妹サイトの『クイズ直感力!』は、画像パズルや画像クイズが多数あります。合わせてご覧ください。

脳トレーニングにゲームも適しています。テレビゲームが脳機能を大きく若返らせたという研究もありますし、健康マージャンのように脳の為に行う趣味もあります。ゲームを選択する際は、脳の損傷部位や、昔の職業(得意分野は機能が残りやすい)に合わせたゲームを選ぶことが重要です。

ただし注意点があります。それは、「楽しむ」という点です。もし、計算問題やパズルを嫌々やっていたり、読み書きをしんどいと言いながらやっているなら、それは脳に良いとはいえません。別の方法を考えるべきでしょう。

認知症のリハビリ3 昔を懐かしむ(回想法)

認知症で最近のことが覚えられなくなっても、昔のことは結構記憶に残っています。ですから、昔の話をすることは脳にとても良い影響があります。
たとえば、ご本人から昔の出来事を教えてもらうとか、昔住んでいた町に何があったのかを書き出してみるとか、昔の音楽やアイテムに触れるなど、記憶に沿うことが心身を安定させ、脳を活性化します。

よく聞かれる音楽療法は、五感を刺激することと、回想法を組み合わせた療法で、昔懐かしの音楽を聴くことでリラックス効果と脳への刺激を促すことができます。

認知症のリハビリ4 運動をする

認知症で寝たきりになってしまうと、行動範囲が狭くなり、脳への刺激が極端に減ることから、認知症が一気に進行してしまう恐れがあります。そうならないためにも、体の機能を保つ運動が必要です。
運動自体が脳への血流量を上げることに繋がり、脳を元気にしますから、できる範囲で体を動かすことを習慣化すると体にとても脳にとってもプラスになります。

認知症のリハビリ5 趣味を続ける/見つける

好きなことは、脳にも好影響を与えます。脳は楽しいことを好み、楽しいと強く活性化します。楽しんでいる時は脳の成長が促されやすいので、趣味は危険がない限りは積極的に行ったほうがいいといえます。

特に手先や五感を使うような趣味は高い効果を発揮します。社交ダンスは五感をたくさん使うことで高い効果を生み出すことが知られています。ボードゲームも手先と頭を使い、会話が生まれるため、こちらも効果が高い趣味です。

心理的につらくならないリハビリを

リハビリは頑張らなくてはならない、やらなくてはいけないもの、嫌だけどやらなければとなってしまうと、拒否反応がストレスで症状を悪化させてしまいかねません。脳はストレスに弱いので、リハビリが逆効果になることもあるのです。

本人にとって楽しく、自尊心を傷つけられず、安心して行える環境と方法が不可欠です。

もし、昔の職業や趣味などで長けた部分が見つかれば、それを教えてもらうのも有効です。人は他人に教えることを楽しむものです。必要とされていると感じるため、喜んで教えてくれるはずです。