健康と抗加齢(アンチエイジング)

高齢者が食べ物や飲み物でむせるのは「嚥下障害」が原因。誤嚥性肺炎を予防5つの方法とは?

高齢になると、飲み込む力が弱くなってしまいます。これは「嚥下障害」と呼ばれ、50を過ぎると誰しも嚥下機能は衰えていきます。ここから誤嚥性肺炎になってしまうと、生命の危機にさらされることもあります。誤嚥性肺炎を防ぐためにできることは何でしょうか。

食べ物を詰まらせるのは人間だけ

食事中に喉に食べ物を詰まらせたり、引っ掛けたり、むせたり。こんなことが起こるのは人間だけです。その理由は、喉の構造にあります。

人は呼吸の時は鼻や口から吸った息を肺に送り込みます。一方で、物を食べた時は食べ物を胃に送り込みます。両方とも喉を通っているのに、行く先は肺と胃に分かれています。
これは、喉で自動的に交通整備をしているからです。私たちの喉には喉頭蓋(こうとうがい)と呼ばれる喉頭のフタがあり、呼吸や声を出している時は開いていますが、物を飲み込むときに固く閉じ、気管に食べ物が入り込まないようにしています。
犬や猫は空気が通る管と、食べ物が通る管が別々です。ですから、食べ物が詰まって息ができなくなることはあり得ません。

若いときはフタが素早く反応してしっかりと閉じてくれますが、年齢を重ねると反射神経や喉の機能が衰え、食べ物を飲み込む際にフタがしっかりと閉じていないということが起こるようになります。これが誤嚥(食べ物や飲み物が誤って気管に入り込むこと)を引き起こします。
さらに、誤って気管に入ってしまったときに、吐き出す力も弱くなっていきます。こうして、誤嚥性肺炎になるリスクが上がっていくのです。
人はしゃべることができる機能と引き換えに、誤嚥というリスクを負ったのですね。

食べながらしゃべると誤嚥性肺炎のリスクが高くなる

高齢になると喉の機能が衰え、交通整備が上手くいかなくなります。その結果、食べたり飲んだりしたときに、誤って気管に食べ物が入ってきてしまいます。これを外に出そうとするとき、むせます。

しかし、高齢になると、むせる時の力、つまり気管から異物を外に出す力が弱くなるため、そのまま食べたものが肺に入ってしまいます。そして、それが炎症を起こすことで誤嚥性肺炎になってしまいます。

しゃべる時と、食べ物を飲み込むとき、喉のフタは閉じる、開くを素早く判断して切り替えています。食べながらおしゃべりをしていると、喉のフタは忙しくなり、間違えやすくなります。

なるべくゆっくりと食事を楽しみ、しゃべる時は箸をおくくらいの気持ちで話すことで、危険を回避できるでしょう。

誤嚥性肺炎を避けるには

頻繁にむせるようになったり、食べた後に声がかれたり、食べ物が喉につっかえる、それを飲み物で流し込むということが増えたらなら、嚥下機能が落ちているサイン。誤嚥性肺炎のリスクが高まっていますから、予防を考えていくほうがいいでしょう。

喉の機能を回復させるのは容易ではなく、どちらかというと喉の機能が弱くなっても誤嚥をしないように予防をすることで、誤嚥性肺炎を防ぐほうが現実的です。ただ、簡単で有効なトレーニングもあります。
以下にトレーニングを含めた5つの予防方法をまとめました。

誤嚥性肺炎の予防1:ゆっくり食べる

急いで物を飲み込むと、喉のフタが間に合わないことがあるので、ゆっくりしっかり飲み込むことが予防につながります。

誤嚥性肺炎の予防2:食べる時は『食べる』だけを行なう

しゃべりながら食べると喉のフタが忙しくなってしまい誤嚥が起こりやすくなります。そのほかにも、テレビを見ながら食べると気持ちがテレビのほうにそれてしまい、汁気が多いものを吸い込んでしまうなどのミスが起こりがちになります。
食べる時はしっかりと味わって、食べる事自体を楽しむことが誤嚥性肺炎の予防になります。

誤嚥性肺炎の予防3: 食べているときに話しかけない

家族など、一緒にいる人は、高齢の人が食べているときに話しかけないことが重要です。話しかけるなら、食べ物を飲み込んだ後、口の中に食べ物がないときにすると安全度が増します。

誤嚥性肺炎の予防4: 熱すぎる汁物を避ける

すするように飲むと、細かな水分が気管に吸い込まれてやすく、むせてしまいます。熱い飲み物は表面をすするように飲むので、危険性が高まります。
普通に飲むことができる程度の温度にするほうが、誤嚥を防ぐためには有効です。

誤嚥性肺炎の予防5: とろみをつける

高齢者施設では、暖かい飲み物にはとろみをつけて、むせることを予防している所もあります。
熱い緑茶などは、さらっとしているので喉に引っ掛けやすいですよね。とろみをつけるのも勿体ない気もしますが、誤嚥性肺炎は命の危険が伴いますから、良い取り組みとして受け入れられているようです。

誤嚥性肺炎の予防6:喉のトレーニングをする

喉のトレーニングはなかなか難しいものですが、少しでも機能を保つために、気が付いた時に行うことがオススメです。

一般社団法人『嚥下トレーニング協会』のホームページに、嚥下機能を保つためのトレーニング方法が掲載されていました。ここで簡単にご紹介します。

喉のトレーニング法1:強く飲み込む⇒息を止める

泳ぎが上手くなりたいなら泳ぐのが一番!と同じ考えで、飲み込む力を強くするなら、飲み込むのが一番!というトレーニング方法です。

自分がどうやって飲み込んでいるのかをしっかりと確かめ理解してから行うことがポイントだそうです。

ゴックン!と強く飲み込み、飲み込むトレーニングをします。
次に強く飲み込んだ時に、力を入れたそのままの状態で止めます。5秒間キープします。
息は止めた状態です。

この、「強く飲み込む⇒息を止める」がメイントレーニングで、以下はサブトレーニングです。

喉のトレーニング法2:飲み込まずに上下させる

飲み込まずに喉を上下に動かすことで、喉の可動域を広げることができます。

喉のトレーニング法3:舌をぐいっと出す

舌を大きく出し、ひっこめる動作を行ないます。
唾液が予想より出ますので、注意して行ってください。

喉のトレーニング法4:あくびをする

あくびも喉のトレーニングに有効だそうです。喉を下げる力、飲み込む力をあげる効果があるトレーニングです。

喉のトレーニング法5:歌う・発声練習をする

声を出すのも喉の大切な機能です。これを意識的に行うことで、嚥下機能も助けることができます。