認知症と介護

認知症の当事者になったら知っておきたいこと 厚生労働省「本人ガイド」より

厚生労働省のウェブページ内に、「認知症施策」がまとめられています。その中の、「認知症について知りたい方へ」という項目内に、「本人にとってのよりよい暮らしガイド(本人ガイド)」が公開されています。

一足先に認知症になった私たちからあなたへ

厚生労働省のウェブページ内で公開されている「本人にとってのよりよい暮らしガイド~一足先に認知症になった私たちからあなたへ~」という28ページからなるガイドでは、認知症と診断されてからの気持ちや、やったほうがいいこと、いい日々を過ごすためのアドバイスなどが記載されています。

認知症と診断されて落ち込むのは当たり前

テレビなどで認知症でも明るく生活している人が映し出されると、特別気持ちが強い人と感じてしまいますが、認知症と診断された直後は、彼らもひどく落ち込んでいるものです。

認知症になると何もできなくなるとか、人生が終わるとか、非常にネガティブなイメージが先行しているため、認知症と診断される衝撃の大きさは計り知れません。
実際は「何もできなくなる」ものではありません。

・自分の力を活かすと、一人でできることがいろいろあります。
・新しいことを学んだり、やりたいことにチャレンジできます。
・家族や地域のために役にたてることだってあります。
(ガイドブックの7ページより抜粋)

ガイドブックに登場する「一足先に認知症になった私たち」も、診断を受けたときは頭が真っ白になり、信じられないと感じ、最悪な気分に見舞われています。

しかし、認知症への理解が進み、支援体制も整ってきている現代において、認知症は「生きづらさはあっても自分らしく楽しく暮らせる」ものに変わってきています。

このガイドブックを読むと、認知症と診断された直後は落ち込んでいても、その後楽しい日々を送られている「一足先に認知症になった私たち」の生活や考え方が見えてきます。

「認知症」の診断がスタートライン

認知症と診断されるのが怖くて病院に足が向かなかったり、家族も言い出しにくかったりして診断が遅れてしまうと、それだけ症状が進んだり、家族内のけんかが増えたり、不安な日々が続いたりと生活が暗くなってしまいます。
認知症は研究も進んでおり、現在は多くの支援が受けられます。ですから、早めに診断を受けて、役所に相談するなどしてサポートしてもらうことが大切です。

ガイドブックに登場する「一足先に認知症になった」本人も、「役所に相談して視界が開けた」「お先真っ暗ではない」「町に出よう」「仲間と話そう」と、「診断を受けてスタートラインに立ったら前に進もう」とアドバイスしています。

「ヘルプカード」で認知症の本人と伝えて助けてもらおう

認知症は目に見えにくい障害です。ですから、自分から伝えないとなかなか理解してもらえません。「なんでわかってもらえないんだ」といら立ちを強めても、相手には「本人が何に困っているのか、どうしてイライラしているのか」わからないのです。

何に困っていて、何が必要で、どんなサポートをしたら役に立つのか、相手は知りたがっているのです。それが伝えられるのは本人だけです。

そこで、「自分が認知症であること」と、「助けてほしい具体的なこと」を記したカードがガイドブック内で紹介されています。

ガイドブック10ページの「何が起きて、何が必要か、自分から話してみよう」でヘルプカードを紹介しています。
「アルツハイマー本人です。ご協力をお願いいたします」
というメッセージとともに、助けてほしいことをメモ書きしたカードです。

周りの人は伝えてもらったほうが本人への理解ができて助かります。説明が難しいときも、ヘルプカードがあれば見せるだけなので簡単ですよね。

ゆる~く構えてできないことは割り切って

どうしようと焦りばかり募らせても心身が消耗するだけでいいことはありません。
認知症はできないことが増えていくものですから、それにたいしてくよくよ悩んでずっと気にしていても疲れて心が暗くなるだけです。

やるべきことをこなそうと考えるより、のんびりしよう、できることを楽しんでやろうと考えるほうが心が明るくなって日々が穏やかに過ごせます。
ストレスは脳を弱らせ認知症の悪化にもつながりますから、気持ちの切り替えは症状の改善のためにも大切です。

やりたいことにはどんどんチャレンジを

認知症になったら何もできないというのは昔の話。今はやってみたいことに積極的にチャレンジすることは症状の改善や進行の予防にも役立つとわかっており、推奨されています。

認知症になってうまくできなくなったり、仲間とのコミュニケーションに支障が出てやめてしまったことがあるかもしれません。また、やってみたいと思っても認知症を理由にあきらめてしまったかもしれません。

しかし、好きなこと、やってみたいことをあきらめてしまうのは非常にもったいないことです。
家族や身近な人にやってみたいことを話してみると、夢がかない始めるかもしれません。
ガイドブックには「やってみたいこと」にチャレンジしている本人たちの様子が載っています。

あなたの応援団が町にいる

人は助け合う生き物です。
ただ、「助けてほしい」ひとを見抜く力はそれほどないものです。
「助けが必要なかったら邪魔になっちゃうな」と助ける前にちゅうちょしてしまう人が圧倒的に多いのです。一方で「助けて」と言われれば喜んで助けてくれるものです。

ガイドブック15ページには、「あなたの応援団がまちの中にいる 」と題してサポートの一覧が掲載されています。
「ケアマネージャー」「介護事業者」「警察署」など地域の支えが味方してくれます。

ガイドブックには、さらに「私の暮らし」と題して認知症本人による「認知症になってからの生活」が写真付きで紹介されています。

さらに、「私が大切にしたいことメモ」と「わが町の情報」という表が用意されていますので、こちらを印刷して書き込むことで、心と情報の整理ができ、前に進む後押しをしてくれそうです。

このページでは「本人にとってのよりよい暮らしガイド(本人ガイド)」の内容をまとめました。28ページからなるPDFファイルです。印刷して手元に置いておくと安心かもしれません。