認知症と介護

「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条とは

認知症の人のために家族ができることを知っておくと、いざという時に少しだけ落ち着いて対処できるようになるかもしれません。政府広報オンラインのホームページに、「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条と題して、家族としての接し方がまとめられていましたので、ここでご紹介します。
(出典元:公益社団法人認知症の人と家族の会

「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条

1.見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン。

認知症の始まりは、「ちょっとしたもの忘れ」から。
老化現象も、「忘れっぽい」、「物の名前が出てこない」といった記憶に関する変化が気になるものですから、混同しがちです。
それでも、「このもの忘れはちょっとおかしい」と気づけるのは家族だからこそでしょう。

家族の加齢は受け入れにくいもの。目をそらさないことが大事

家族(主に親や配偶者)の認知症はなかなか受け入れにくく、診断によって病気が確定するのを恐れる心理が働くものです。しかし、次の『2.早めに受診を。治る認知症もある』にあるように、認知症は早期発見が非常に大切す。

2.早めに受診を。治る認知症もある。

「認知症=治らない」というイメージが強いですが、中には治る認知症も存在します。
別の病気で、一時的に認知症に似た症状が出る、ということもあります。
正しい診断のためにも、まずは診察を受けることが大切です。
認知症は早期発見が重要で、適切な治療があるかないかで、予後が大きく異なります。

適切な医療を受けるためにも早期発見を

介護制度や投薬治療など、適切な医療を受けるためにも、診断が必要です。認知症の症状が出ていても、その原因がアルツハイマー型認知症なのか、その他の認知症や他の病気なのかで治療法が異なります。

3.知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。

アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症など、一口に認知症と言っても、症状や進行の仕方、適切な対応の仕方が異なります。
本人や家族がより快適な生活を送れるように、病気についてよく知ることが大切です。
その後の介護計画を見据えるうえでも知識は大いに役立ちます。

4.介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。

認知症は家族だけで抱え込むには負担が大きすぎます。ですから、介護サービスを積極的に利用することが家族の息抜きの時間を増やし生活の質を変えます。介護保険を含め、サービスを利用するのは当然のことなので、遠慮は不要です。

本人にとっても介護サービスの利用は利点が多い

どうしても、認知症を発症した親や配偶者の面倒は家族でと思いがちです。
しかし、介護のプロの介入は本人にとっても利点が大きいです。

認知症の症状が、施設への入所によって改善することもあります。本人にとっても家族以外の社会に触れることで、脳が刺激され、良い方向に向かうこともあります。
家族で抱え込まず、積極的に介護サービスの利用を検討してみてください。

5.サービスの質を見分ける目を持とう。

介護保険サービスは、利用者や家族が選択できます。選べるということは、良い選択、悪い選択が出てきてしまうものです。よく調べることで、質の高いサービスを選択する目を養うことが必要です。

泣き寝入りはしないこと

介護サービスを利用するうえで、トラブルがあったときは、泣き寝入りはしないでください。相談できる場所に電話相談をするなどして、冷静に訴える姿勢を持ちましょう。

6.経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。

介護経験者の知識と経験が、次の介護者の大きな支えになります。困ったときは、経験者に相談することが本人のためにも役立ちます。
1人で抱え込まず、経験者を頼り、共感しあったり、情報交換をしたりすることで、心が楽になるはずです。
親族や近所の知人以外にも、各都道府県に、家族の会も存在するはずです。

地域包括センターや家族の会を頼ることができます。

お住まいの市区町村のホームページから地域包括センターの電話番号を調べたり、市区町村に電話をしたりして、認知症患者の家族が交流する場がないかの情報を集める方法もあります。

7.今できることを知り、それを大切に。

知的機能が時間経過とともに低下し、速度はそれぞれであっても徐々に進行していくのが多くの認知症です。失われた能力の回復を求めても仕方がありません。それよりも、「今できること」に注目し、できることを大切にして、時には認知症の方を頼ってみるのも本人にとって良いことです。

長く残る能力は人によって違う

若いころに得意だったこと、職業としていたことは、長く能力が残っているものです。
認知症の人はこれができないと決めつける必要はありません。

8.恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう。

認知症は家族や閉じられた人たちだけで支えるには負担が大きいので、地域の理解者、協力者を増やしましょう。認知症の人の実態をオープンにすれば、どこかで理解者、協力者が手をあげてくれるはずです。
公的な相談機関に加え、私的なつながり、地域社会、インターネットなどのさまざまな情報を上手に使い、
自らの思いを訴え、協力を求めていくことも大切です。

万引きをしてしまう症状の認知症もある

前頭側頭型認知症の8割を占めるといわれるピック病は、人格が変わり、万引きや痴漢行為などをしてしまう症状がでる傾向にあります。
もし、よく行く店があるなら、症状を伝えるなどして味方になってもらう必要もあるかもしれません。

9.自分も大切に、介護以外の時間を持とう。

介護のために仕事をやめ、趣味をやめ、旅行を諦め…と、自分を生活を介護に捧げて、何についても「介護のためだから仕方ない」と自分を説得していたとしたら、「介護で自分の人生を犠牲にされた」と思ってしまうかもしれません。
介護サービスをフル活用して自分自身の時間を確保し、自分の生活や生きがいを大切にしなければ心が悪い方向に進んでしまいます。

介護者の精神状態は本人に伝わる

介護をする人の精神状態が悪くなれば、それが認知症の本人にも伝わります。お互いが辛く悲しい気持ちにならないように、介護をする人が自分のための時間を確保する必要があるのです。

10.往年のその人らしい日々を。

認知症になったら何もかも終わり、というのは間違いです。認知症になっても、その人の人生が否定されるわけではありません。やがて来る人生の幕引きも考えながら、その人らしい生活を続けられるよう、家族で話し合いましょう。

本人の好きだったことが症状を好転させる

たとえば、社交ダンスが好きだった女性は、認知症で寝たきりだったのに、社交ダンスをきっかけに海外旅行を楽しめるまでに改善したという例があります。
認知症で寝たきりだったのに2年後に海外旅行に!驚きの回復法とは
本人らしさを大切にすること、本人の好きだったことを生活に組み込むことで、症状に変化があるかもしれません。少なくとも心の安定に役だつでしょう。