認知症と介護

ピック病(前頭側頭型認知症)とは? 若年性認知症の1つ

ピック病は、前頭側頭型認知症に分類される病の一つで、前頭側頭型認知症のおよそ8割がこのピック病です。

前頭側頭型認知症とは

前頭側頭型認知症とは、脳の前頭葉と側頭葉に萎縮が見られる認知症です。その中でも、ピック病は、脳の神経細胞に「ピック球」と呼ばれる異常な変異をしたたんぱく質が見られます。
前頭側頭型認知症の約8割がこのピック病です。
それ以外には、意味性認知症と、進行性非流暢性失語があります。

ピック病の症状とは

アルツハイマー型認知症と異なり、初期の段階では物忘れはあまり起こりません。
ですから、認知症とわからずに症状が進行してから診断を受けるケースが多い病気です。

ピック病は前頭葉と側頭葉が萎縮することで、性格の変化や社会的行動がとれなくなるという症状が特徴的です。万引きをするとか、売られているお惣菜を手で触ってしまうなど、本人は悪いとは思わずに行ってしまいます。本人はしっかりと理由があってそれらの高度をしています。万引きなら「必要と思ったから」であったり、お惣菜なら「弾力があるか調べようと思ったから」であったりします。
脳の萎縮が理由で何がいけないことなのか、判断がつかなくなっているのです。

ピック病の主な症状

・万引きや、他人の家に入る、触れてはいけないものも平気で触るなど、社会的行動がとれない。
・怒りっぽくなるなど、性格が変わる。
・我慢ができず、相手を考えた行動もできない。
・「常同行動」という同じ時間に同じ行動をとるという生活パターンが見られる。
・笑っていたのに突然泣き出すなど、感情の制御ができない。
・共感や感情移入、同調ができない。
・無関心。
・片付けができない。
・目標や計画を立てることができない。
・意味もないのに同じ行動を繰り返したり、同じ言葉を繰り返したりする。
・何かに異常に執着する

ピック病の余命とは

ピック病になってから、余命はおよそ10年といわれています。
ただ、診断が遅れることが多い病気なので、診断後、どの程度余命があるかは診断が付きにくいでしょう。

ピック病の治療法について

残念ながら現在までに有効な治療法は見つかっていません。
症状を遅らせる薬もできていません。
対処療法が中心となります。
うつ病の薬などで異常行動を和らげる方法をとることもあるようです。
しかし、ピック病を専門に見るグループホームなどでは、薬は使用しないというところもあります。

大切なのは周囲の理解

ピック病は社会的行動がとれなくなってしまう病なので、周囲の理解が非常に重要です。
たとえば、よく万引きをしてしまうお店には、病気のことを話しておくとか、よく合う人にはあらかじめ病気と症状を話しておくなど、身の回りの人や地域の人たちの協力が不可欠でしょう。

常同行動を理解して、本人の行動を遮らないようにするなど、ケアのポイントはその他の認知症とだいぶん異なります。

アルツハイマー型認知症と異なり、記憶は比較的保たれているので、外に出たっきり迷子になって帰ってこれない、というケースも少なく、誰かに心無い言葉や行動をされれば、それも記憶に残りやすくなります。

まだまだ認知度もそれほど高くない難しい病気なので、ピック病に詳しい施設や病院を頼れることが理想です。