認知症予防と若脳

認知症予防に家事がいいというけれど、どんな家事がいいの?

認知症予防に家事が効果的という話を聞きますが、家事と言っても種類は様々。どんな家事がより高い効果を発揮するのでしょうか。

負荷の高い家事と低い家事に分けた研究結果

シンガポールにある老年医学の研究所で都市部に住む高齢者240人を対象に行われた研究によると、家事を行っている高齢者は、そうでない高齢者に比べて認知機能が高い傾向にあることがわかりました。

この研究では、若い人(21~64歳)に向けても同様の調査を行いましたが、若い人の場合は家事による認知機能の差はなかったと言います。若い人は十分に認知機能が高く、差が現れることが無かったと考えられます。

さらに、負荷の違いによって高まる能力に違いがあることが分かったのです。

負荷の違いについて

負荷が高い家事…布団を干す/掃除機をかける など
負荷が低い家事…食器洗い/洗濯 など

負荷が高い家事を良くおなう人は、そうでない人(家事を行なわない人、負荷の低い家事が多い人)に比べて『注意力』が14%高かったそうです。

負荷が低い家事を良くおなう人は、そうでない人(家事を行なわない人、負荷の高い家事が多い人)に比べて『作業記憶(会話などを一時的に脳内に記憶する力)』が12%、『遅延記憶(直前に得た情報を思い出す力)』が8%高かったそうです。

どんな家事が認知機能の改善にいいのか?

先ほどの研究結果より、家事によって改善できる認知機能が異なります。

負荷が高い家事は、「注意力」が高まります。
たとえば布団干しの際に布団を落とさないように、また汚さないようにするために注意を払います。
掃除機をかける時はまんべんなく全体に掃除機をかけられるように注意をします。
常に注意力を使う作業が多い為、注意力を高く保つことに役だつと考えられます。

負荷が低い家事は、「記憶系の力」が高まります。
たとえば食器を洗う際は、スポンジの泡立ちを気にしつつ、お皿の汚れ具合を気にしつつ、お皿の大きさや汚れによって洗い方を変えるなど、気にすべきポイントがいくつもあるでしょう。落としては割れてしまいますし、洗い残しがあっても気になります。あちこちを気にしながらも、すべきことを忘れずにてきぱきと作業をこなすためには一時的な記憶を保つ力が必要です。
さらに、『スポンジを泡立てる→食器をスポンジでこする→洗い流す→拭く→しまう』と工程が多い為、流れを頭の中にインプットしながら行う必要があり、記憶力の維持が重要な家事といえます。

以上から、認知機能の改善や維持に役立つ家事は、まんべんなくいろんなことをするということになります。
認知症を遠ざける効果がわかっている『料理』に加え、布団を干したり、選択をしたりと、負荷の違う家事を行なっていくことで、脳はまんべんなく鍛えられ、認知機能の改善や維持を助けてくれます。