認知症と介護

認知症のもの忘れと通常のもの忘れの違いとは

「えっと、あの人誰だっけ。顔は出るんだけど名前が…」
「あれとって、ほら、あれだってば。えっと、ケチャップ!」
こんなことが多くなっていませんか?
名前が出てこない、代名詞(あれ、それ)が増えると、「ボケたかな?」「認知症?」と気になってしまうものです。
認知症の物忘れと、通常の物忘れの違いは何でしょうか。

認知症のもの忘れは普通のもの忘れとは違う

冒頭に紹介したようなもの忘れは普通のもの忘れで、主に老化による現象です。
老化というのも嫌なものですが、認知症のもの忘れとは性格が異なります。

認知症の場合、朝ご飯を食べた後にそのこと自体を忘れ、「朝ご飯はまだ?」と 言 ったり、海外旅行に行った記憶自体を忘れ「イタリアには行っていない」と言ったり経験を丸ごと忘れてしまうのが特徴です。
一方で昔のことはよく覚えています。

たとえば、映画を見た後で、
「あのシーン良かったよね~」「え?どのシーン?あ、あれか」であれば正常ですが、「あのシーン良かったよね~」「え?何の話?映画なんて見てないよ」と、映画を見たという事実をそっくり忘れてしまうのは認知症のもの忘れです。

知っている人に会って、初めて会ったように振舞うのは、その人と会ったことがあるという記憶自体が抜け落ちているため、本人は本当に初めてだと思っている状態です。これも認知症のもの忘れです。

財布を盗まれた!も認知症のもの忘れ

認知症の症状を表すエピソードとしてテレビ番組でもたびたびドラマ化される「財布を盗まれた」シーン。
これは、認知症によって脳がおかしくなることに対する恐怖と不安に加え、財布を無くしたという事実自体に身に覚えがない(どこかに置いた、移動させたということ自体を忘れている)ために起こります。
財布を本来あるべき場所から移動させた記憶がないのですから、誰かが移動させた、つまりは盗まれたとなるのです。不安が強いため、しばしば被害妄想に走りがちになるのも認知症の特徴の1つです。