老後の備え

視聴記録:ドキュメントJ『えんがわ』

2021年10月17日(日)放送(BS:TBS)のドキュメントJ『えんがわ』。1999年に制作されたこの番組では、107歳になったぎんさんと、4人の娘たちの生活が描かれていました。四女宅(ぎんさんが同居)の縁側ででは、平均年齢80歳になる4人の娘たちの日常や死生観が語られます。

この番組は、「第54回文化庁芸術祭」テレビ部門 ドキュメンタリーの部『優秀賞』、「1999年日本民間放送連盟賞」テレビ教養番組部門『優秀賞』、「第37回ギャラクシー賞」テレビ部門『優秀賞』、「第24回JNNネットワーク協議会賞」教育情報番組『大賞』を獲得しています。

4人の姉妹から超高齢化社会を考える

矢野年子さん(やの としこ/当時85歳)、津田千多代さん (つだ ちたよ/当時81歳)、佐野百合子さん (さの ゆりこ/当時78歳)、蟹江美根代さん (かにえ みねよ/当時76歳)の4姉妹は、しょっちゅう蟹江さんの家(ぎんさんの家)にあつまり、えんがわに座っておしゃべりを楽しみます。
その特徴は、笑い声が多く、4人全員が会話に参加すること。

普段は別々に暮らしている4人。4世代同居という大家族の蟹江さん以外は、普段は会話があまりなく、このえんがわでの談笑が数少ない楽しみの1つなのだとか。

長女の矢野さんは、1人暮らしで「生きているだけ。さみしい」と話し、次女の津田さんは同居の夫とほとんど会話をしません。夫よりも、近所に住む娘婿が毎日出勤前に預けに来る猫との時間を楽しんでいるようでした。三女の佐野さんは夫に先立たれてから孤独感が強く、とくに1人の食事の際にそれを実感するのだとか。

四女の蟹江さんは、母のぎんさんのお世話に加え、広い庭の手入れも行うなど、精力的に活動してる様子が映されていました。
次女の津田さんの夫は毎朝新聞が配達される前に起き、朝食を挟んで3時間、じっくり目を通すそうです。この方を初め、番組出演者の方は全員脳が若々しく、元気に年を重ねられていました。
※2021年時点で長女、次女のお二人がご存命でした。

姉妹が語る生と死

長女の矢野さんは、「長生きしようとは思わない」、「何の役にも立たないから」と話し、死に方についても、「事故はダメ。相手の方が気の毒」と、相手を気遣います。
次女の津田さんは、母親(ぎんさん)ほどの長生きはしたくないと話します。
4人の会話からは、「人に迷惑をかけたくない」、「泣いてもらえるうちに死にたい」、「病気で2年も3年も世話かけちゃったらほっとされてしまう」、「心臓麻痺かなんかでコロっといければ」と、死に対する思いが自然にでてきます。そして、このような会話にも4人の笑い声が常にありました。死に対する恐怖もないと話していました。

AI研究者が驚いた4姉妹の脳の若さ

こちらのページに、2013年の女性セブンによる記事がまとめられていました。

人工知能(AI)についての研究を進めている千葉大学大学院(工学研究科)の大武美保子准教授は、高齢者同士の会話を支援して、認知症予防に役立つというロボットを開発していて、4姉妹からヒントを得ようとしていました。
4姉妹は、発言と相づちをすべて1とカウントすると、盛り上がっている時は3分間で102回もやり取りがあったそうです。通常は、高齢になると頭の回転がついていかなくなり、それほど会話のキャッチボールが早くはいかないものです。4姉妹は普段からおしゃべりをしているせいか、会話の際に脳が活発に動いていることが分かったのです。

4姉妹の特徴と健康長寿

姉妹は全員が自分の足で歩き、自分で食事を準備し、介護者もいない…と、生活が自立していました。
ぎんさんも通常の食事(やわらかくはするものの)を食べていましたし、自分1人で立ち上がってテーブルまで歩いてきており、107歳とは思えない元気さでした。

自分の事を自分でする、おしゃべりをするという2つは、この姉妹にとって欠かせない健康法であると感じました。集まっておしゃべりをするという楽しみがあるからこそ、心にハリを持って普段の生活ができるのだと思います。もちろん遺伝の要素も強いとは思いますが、健康長寿にはそれなりの理由があるのだと感じ取れる番組内容でした。